大気球は、飛行機でも行くことが難しい地上から数十キロという高さまで上がり、宇宙や地球、大気の状態などを観測することができます。気球による実験、というのはあまり聞き慣れないかもしれませんが、ロケットや人工衛星と同じように、宇宙や地球を観測する為のとても重要な手段の一つです。大気球は人工衛星などに比べて、お金があまりかからない、観測機器を沢山載せられる、必要な時に使える、といった特徴があります。日本は、世界で一番高い所まで行ける気球を開発するなど、この分野で世界の最先端の技術を持っています。
地球を見ている
地球の大気の観測は大気球の大きな役割の一つです。大気球の行くような空の非常に高い所の大気を調べ続けることで、地上では知ることの難しい地球の大気の変化や、地球温暖化ガスの変化などを知ることができます。
宇宙を見ている
X線や赤外線などの一部の光は大気に吸収されてしまって地上まで届きません。こうした波長で宇宙を観測するには、装置を高い所まで持ち上げて観測する必要があります。人工衛星を使う方法もありますが、より高い所まで上がれる代わりに、準備に何年もの時間がかかり、またお金もたくさんかかってしまいます。大気球ならば行ける高さは限られていますが、より手軽に観測するこ とができるのです。
実験
大気球で行ける地上数十キロという高さでは、ほとんど空気がありません。またとても高いのでものが落ちてくるのに時間がかかります。こうした条件は、宇宙で使う機器などのテストをするのにぴったりです。たとえば、地球にサンプルや人を持ち帰るテストや、世界初の宇宙ヨットイカロスの帆を開く実験なども、大気球によって行われました。
高く飛ばす
気球を高く飛ばすためには、気球自体を軽く作る必要があります。JAXAでは2003年に0.0034ミリメートルという非常にうすいポリエチレンのフィルムを使い高度53キロメートルまで到達しました。これは当時の世界記録です。現在さらに薄い0.0028ミリメートルのフィルムの開発に成功し、このフィルムを使った気球で高度55キロメートルまで到達することを目指しています。
長く飛ばす
気球は昼間は温度が高くなって大きくふくらむのですが、夜は温度が下がってしぼんでしまいます。しぼんでしまうと落ちてきてしまうので、夜はバラスト(オモリ)を捨てることで調整しています。長く飛ぶにはこの昼夜のふくらみ具合を一定にする必要があるのです。JAXAでは気球が縮むのを防ぐ「スーパープレッシャー気球」を開発しています。この気球が完成すれば40日間という長期にわたっての飛行が可能になります。