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オゾン層の破壊状況など地球のことを調べることもできますし、宇宙によく似た場所(高度約50キロ)まで飛んでいくので天体観測など宇宙のことを調べることもできます。ほかにも装置を上空から落として無重力実験を行うなど、色々なことができるんですよ。
僕が一番すごいと思うのは、そこにある物……例えば「空気」を実際に採って、帰って来られること。二酸化炭素がどれくらい含まれているかとか空気の成分をじっくり調べられるし、その空気を長い間保存しておくこともできる。20年後、今よりもっと科学技術が進歩したときに改めて調べれば、今の技術では見つけられない新しい成分を発見できるかもしれませんよね。
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そうなんです。今は「スーパープレッシャー気球」という、もっと高いところまで飛んで、もっと長い時間空にいられるような、新しい気球を作っています。今のところ高度53キロという世界記録を持っているんですが、もっと高く飛ばしたいですね。
「調べる」と「作る」のほかにもう1つ、僕と同じような研究者たちをサポートする仕事もしているんです。宇宙で何かを調べるというと人工衛星を使った実験が思い浮かぶと思いますが、人工衛星は作って打ち上げるまで何年もかかるし、お金もたくさん必要です。だからやりたい実験をなかなか出来ずに、待っている研究者がたくさんいます。でも大気球なら「こんな実験をしたい!」と思ってから1年くらいで飛ばせることもあるし、お金も1000分の1くらいで済むんですよ。人工衛星でしかできないと思われていることのうち、少しでも多くのことを大気球でできるようになればいいなと思っています。
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虫とか植物を見たり、朝顔をしぼって色水を作ったり、身近なもので遊ぶことが大好きでした。学校の勉強では理科の実験が好きでしたね。リトマス試験紙の色が変わるのとか。
宇宙の仕事をしたい、と思ったことはなかったんですが、小学生のころアポロ16号が持って帰って来た「月の石」を見たことがあって、もしかするとそれが宇宙を意識するきっかけだったかもしれません。
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うーん中学生のときからずっと、ソフトテニスばっかりしていたので……。子供のころは勉強よりも、いろんなことを体験することのほうが大事だと思います。
でもやりたいことが決まってくるとだんだんと勉強はしなきゃいけなくなってくる。そのときに、勉強と体験が結びつくといいですよね。
たとえば数学は、誰かに自分が体験したことを説明するときに、わかりやすく表現するための道具としてとても役にたつことがあるんです。
今は何の役にたつかわからない勉強でも、あとから「あ、これ知っててよかった!」って思うことはたくさんあると思いますよ。
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空を見たら、雲の隣にはいつも気球がある、という世界を作りたいです。
- さいとう・よしたか
1970年生まれ。科学観測用気球の開発とそれを用いた科学観測を行っています。